ヘルスサイエンス

2008 春
美的健康を目指すよそおいで健康に

「よそおう」とは…

「よそおう」という言葉を広辞苑で引くと、「装う」:①したく、準備をする。②飾り整える。③ふりをする、見せかける。とあります。「よそおう」は「粧う」とも書きますが、この場合は主にお化粧をする意味に使います。そもそも「粧い」は、その昔、虫や日光から肌を守るために泥などを塗ったことに始まりました。やがて、邪気が入りやすいと考えられた目や口に魔除けとして赤い色を塗ったり、入れ墨をするといった心身の健康を守る医療的ともいえる行為となり、さらに装飾的な化粧へと変化していきました。

日本では昔は身分、年齢、未・既婚などを表わすものでしたが、顔を引き立てる、いわゆる化粧へと役割が変化していったのです。化粧は「けわい」と読むこともありましたが、これは「気けはい配」に通じ、単に顔を飾るのではなく、身だしなみや雰囲気にまで気を配ることを意味したようです。昔の化粧は「粧う」というより「装う」に近かったのかもしれません。


よそおいと心の深いカンケイ

ファッションや髪型がバッチリ決まった日は気分も良いものです。反対に気に入らない日は、一日中浮かない気持ちで過ごすことになりませんか。人はこういった装いと気分とのつながりや装いによる効果をさまざまな場面で利用してきました。

古くは、戦いに赴く戦士の化粧や盛装、あるいは権力者の祭事や儀式ならではの装いなどは〝日常生活〟から〝特別な日や場所〟への転換を象徴するものでしたが、戦士の士気を高めたり、人々に儀式の神性をアピールする効果もあったでしょう。現代でもスーツでビシッと決めて臨んだり、デートに勝負服を着たり、装うことで自ら気持ちを高めたり、演出したりするものです。極端な例ですが、制服や映画・アニメの登場人物などに仮装する〝コスプレ〟も、全く違う自分を装うことでストレスを発散する手段のひとつかもしれません。

さらに見た目を装うだけではなく、人はいろいろな自分を〝装って〟いることも多いのではないでしょうか。会社での自分、家族といる時の自分、友人と過ごす時の自分…。いつでも素の自分でいられればよいのですが、人はさまざまな場面に応じた自分を「よそおう」ことでスムーズな人間関係を築き、自分を保っている部分もあるようです。つまり、「よそおい」によって自然に気持ちが切り替わりもするし、逆に状況や気持ちに合わせて「よそおう」ことで自分をコントロールすることも可能と いうわけです。「服装の乱れは心の乱れ」とも言いますね。「よそおい」と心は複雑で密接な結びつきがあり、どちらからも影響しあうものなのです。


よそおうことができない人々

 社会生活を営んでいく上で、ある程度の「よそおい」は必要です。しかし、歳をとったり、病気になると体が思うように動かせなくなることがあります。また、ストレスなどで精神的に疲れきってしまう人もいます。そうなると、お化粧や身だしなみを整えることが億劫になり、「よそおう」ことに興味が持てなくなってしまいます。おしゃれだった女性が化粧もせずに髪ボサボサでいたり、いつもきちんとしていた男性が無精ひげを伸ばして薄汚れた服を着ていたり…。場合によっては「よそおう」のが面倒くさいという単純な問題ではなく、社会に、または自分と社会とのつながりに関心が持てなくなってしまったことの表れだと考えられます。

最近の〝電車内で化粧をする女性〟というのも議論され、そこには習慣や環境、躾、常識の変化などさまざまな要因があるようですが、知り合い以外は関係ない社会、知らない人にはどう見られようと構わない、というわけでしょうか。だんだん気配や気配りというものがなくなり、〝常識的な人〟を「装う( ふりをする)」ことさえできなくなっているのかもしれません。


よそおいで若返る!

ある老人ホームで認知症のお年寄りにお化粧をしてあげたところ、イキイキとして表情に変化が現れ、身だしなみに気を使うようになったという話を聞いたことが ありませんか。お年寄りだけでなく、心の傷や、顔に傷きずあと痕があって引きこもってしまった女性などでもお化粧をしたことで気持ちが前向きになり、外出できるようになったなどの効果が実際に見られています。たかがお化粧でも心には大きな作用があるのです。

これらは「化粧療法」といい、メイクセラピーなどと呼ぶこともあります。従来は病院や介護・高齢者施設では、顔色判断の妨げにもなることからお化粧を禁じる ことが多かったのですが、最近は精神的なケアとして、またQOL ( 生活の質) の向上にもなると、化粧療法を積極的に取り入れているところも増えています。

特に高齢者にとっては、非日常的な行為で心身の刺激になる、肌に触れてもらってリラックスする、リハビリや交流の場への参加が積極的になるなどの効果があるといいます。地味な装いや住環境、変化・刺激の少ない生活ではかえって無気力となり、思考能力も低下するというもの。口紅をつけてみたり、スカーフを巻くだけでも、表情が やわらかく、若々しくなります。いくつになっても「きれいだね」とか「かっこいい」などと言われるのはうれしいものです。同じお年寄りでも、身だしなみを整えている人の方がしっかりしていてボケにくいといいます。「よそおう」ことで気分よく、ボケ予防になり、周りの人たちにとっても気持ちいいなら、この高齢化社会にこんなに良い方法はありません。


よそおいの輪で健康に

お年寄りや病人がいる場合、介護する側の人にゆとりがないことも多いのではないでしょうか。介護は大変な重労働。肉体的にも精神的にも疲弊してイライラした り、厳しい表情や態度になってしまうこともあり、それは介護する側にもされる側にもつらいこと。そんな時こそ介護する側の人にも「よそおい」が必要なのです。軽いお化粧や明るい色の服でリフレッシュしてみます。元気を取り戻せば優しく、笑顔にもなれるはず。それは周りにも伝わります。お互いの心の健康が、体の健康にも良い影響を及ぼすことでしょう。

人を外見で判断してはいけないと言いますが、現実にはまず外見を見てしまうのが人間。もちろん内面を磨くことは大切ですが、一方で、外見をよそおうことによって対人関係がうまくいく場合もあります。上手に「よそおう」ことは、楽しみ、リラックスし、自信や価値を高めるなど、自分に対してプラスになる面と、周囲の人々や社会に影響を与え、つながり、協調性を高めるという二面性を持っているのです。心を癒し、社会と調和する「よそおい」を心がけて心身ともに若々しく健康にいきましょう。


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