スキンケア研究室

2009年 秋
皮膚の抗菌力

ひなこちゃん

今年は、夏からインフルエンザが流行ったりして、本格シーズンを迎えて心配 ですね。おばあちゃんが、皮膚を鍛えると風邪を引かないと言っていましたが、もしそうできるなら良いですよね。


ノン子さん

実際に、健康な皮膚は病原性の物質や微生物にだって負けない力を持っているのよ。皮膚の状態が良いことは体の健康につながるわ。では早速、皮膚の抗菌力を構造と機能から確認し、ついでに皮膚を鍛えるとはどういうことか、考えてみましょう。



さまざまな抗菌システム

ノン子さん

毎度おなじみ、皮膚の図を見てね。
皮膚の図


ひなこちゃん

外側をガッチリ覆う表皮-皮膚の本体である真皮-そしてクッションの役割をする皮下組織という三段構造に、毛髪や皮脂腺、汗腺もそろっていますね。でも、今回の図には皮膚の表面や毛髪の周りに何やら蠢いていそうなものが描かれていますが…


ノン子さん

それは後のお楽しみ!まずは表皮から見ていくわよ。


ひなこちゃん

健康な表皮は、見た目もしっとりと美しく、しかも外界の刺激や異物の侵入に対して、ガッチリした防護壁の役目を担っていますね。


ノン子さん

そして、エクリン腺からは、体温を調節したり皮脂膜の成分になるサラサラの汗だけでなく、何と抗菌物質も分泌しているのよ。


ひなこちゃん

自前の抗菌物質まで作っているのですか!


ノン子さん

すごいでしょう?それから皮脂膜は、乾燥から皮膚を守るばかりでなく皮膚の表面を弱酸性に保ち、外から来る細菌類を阻止しているの。大概の病原菌は酸性では増殖できないのよ。


ひなこちゃん

それで『皮膚は弱酸性』が基本なんですね。皮膚の構造と仕組み自体が抗菌力と言えるんですね。ところで、どうも蠢いているものが気になってしまうのですが…? 頼れる味方、「常在菌」


ノン子さん

では、そろそろ正体を教えてあげましょう。それらは「皮膚常在菌」なのです。


ひなこちゃん

「ヒフジョウザイキン」って、つまりその、細菌なんですね!細菌は酸性には弱いんじゃないんですか?


ノン子さん

1,000個~100,000個、種類にして平均10種類位の細菌実は、健康な皮膚には何と1cm2あたりに1,000個~100,000個、種類にして平均10種類位の細菌やカビなどの微生物がいるのよ。
皮膚全体でおよそ1兆個になるそうよ。皮膚にただくっついているだけのものも居れば、中には私達の皮脂や汗をエサにして、酸性物質を作り出しながら暮らしているものもいるの。
そういう、いつも居る菌達を「常在菌」と呼ぶのよ。


ひなこちゃん

わあ、1兆個も居るんですか?そんなにいて大丈夫なのでしょうか?


ノン子さん

大丈夫です。というより、常在菌が作り出す酸性物質が皮脂膜を弱酸性にしてくれているので、皮膚がそして私達の身体が守られるのよ。特にお世話になっているのが、皮膚の表面にいる「表皮ブドウ球菌」と毛穴の中にいる「アクネ菌」ね。うまく棲み分けをしてバランスをとっているのよ。


ひなこちゃん

棲み分けしているのは面白いんですけど…ブドウ球菌ってキズを化膿させるヤツではないんですか?それに、アクネ菌はニキビの元になるんでしょう?


ノン子さん

キズを化膿させたり、食中毒を起こすのは「黄色ブドウ球菌」というヤツよ。表皮ブドウ球菌は、同じブドウ球菌でも病原性はないの。黄色ブドウ球菌は酸性に弱いから「表皮ブドウ球菌」ががんばっているところには居られないの。アクネ菌も普段は毛穴の中で、皮脂を分解してうるおい成分や酸性物質を作りながら静かに暮らしているのよ。様々な原因で皮脂の分泌が過剰になってしまうと、アクネ菌が暴れだしてニキビを作り炎症を起こしてしまうのよ。


ひなこちゃん

表皮ブドウ球菌が、黄色ブドウ球菌から守ってくれているし、アクネ菌も暴れさえしなければ、いてほしい菌なのですね。


ノン子さん

それから、自前の抗菌物質だって、エクリン腺から出てきただけでは活性を示さず、常在菌が出す酵素の作用によって初めて抗菌性を示すようになるということよ。



洗いすぎは逆効果

ひなこちゃん

お肌の抗菌システムは、常在菌によって完成されるのですね。常在菌には随分お世話になっていたんですね。そうしたら手を洗ったり、お風呂に入ったりしない方が良いのでしょうか…?


ノン子さん

そうもいかないのよね。皮膚は汗や皮脂でうるおっている分ホコリや異物がつきやすいし、皮脂が酸化されて刺激物に変わってしまったり、臭いがしてきたりするで しょ。この臭いも実は皮膚常在菌のしわざなのよ。例えば、アポクリン腺から出る汗はコレステロールやステロイド類を含み、これが菌によって分解されると悪臭を放つ物質 に変わってしまうの。


ひなこちゃん

定期的に身体を洗うことは、社会生活上も必要ですね。


ノン子さん

石けんを良く泡立ててやさしく洗い、流れるお湯や水で石けん分が残らないよ うにすすぐだけで皮膚の菌数は一時的にグッと減ります。病原菌もいなくなるわ。でも、 常在菌は毛穴や汗腺の中に待機しているので、すぐに出てきて活動を始め、しばらくすれば元通りになります。


ひなこちゃん

そういえば、20分程で皮膚の弱酸性は戻るんでしたね。


ノン子さん

『清潔第一』といってブラシでゴシゴシ洗ったりするのはお奨めできないわ。 毛穴や汗腺にいる常在菌まで掻き出してしまうので、洗った後で皮膚の弱酸性がなかなか戻らなくなってしまいます。大好きなアルカリ性になっていて、邪魔な常在菌がいないときたら、病原菌が早速やって来て増えだしてしまうのよ。


ひなこちゃん

ゴシゴシ洗いでキズなんかついてしまったら、黄色ブドウ球菌は大喜びですね。


ノン子さん

そうなの。特に敏感肌や乾燥しやすい人にかゆみが出たりするのは、洗いすぎが原因で黄色ブドウ球菌を呼んでしまったから、という場合もあるということよ。


ひなこちゃん

皮脂膜や保湿成分が減り、常在菌も減ってしまうから「洗った直後の皮膚は無防備」といわれるのですね。 常在菌を鍛える


ひなこちゃん

ところで、『皮膚を鍛える』って、保湿ケアをしたりマッサージで血行を良くし たりということだけでなく、常在菌ともうまく付き合っていくことなのかな、という気がしてきました。


ノン子さん

そうね、大切なところよ。身体を冷やして皮膚の温度が下がると、常在菌だって元気がなくなります。バランスの悪い食事やストレスなどで皮脂の分泌量に乱れが生じると常在菌が暴れだします。お肌に良いことは、常在菌にも良いことなのです。常在菌を大事にしてお肌の健康を守りましょうね。上手な手洗いのために…



参考文献
・福林智子:皮膚常在菌と香粧品によるコントロール,Fragrance Journal, 31(3),23~28(2003)
・青木皐 :人体常在菌の話,㈱集英社(2004)
・漆畑修 :エステティシャンのための皮膚科学・脱毛概論,日本エステティック協会(1994)


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