スキンケア研究室

2016年 春・夏
皮膚の時計

概日(がいじつ)リズムと体内時計

ノン子さん

概日リズム とか体内時計という言葉を聞いたことはある?


ひなこちゃん

はい。睡眠や覚醒、体温や血圧の調整、ホルモンの分泌など、私たちの身体に起こるいろいろな現象は、約24時間の周期をもつ概日リズムに従って起こっていて、そのリズムをコントロールするのが体内時計ですよね。


ノン子さん

なかなかやるわね。概日リズムというのは、地球の自転で生じる昼と夜に従って10億年以上前から生物の遺伝子にプログラムされているものなのよ。生物の種類によってリズムに違いがあって、例えばヒトなどの昼行性(ちゅうこうせい)動物は日中に活動するし、ネズミのような夜行性の動物は昼間に眠って夜に活動するようになっているの。


ひなこちゃん

〝昼行性〟って言うんですね。


ノン子さん

私もその言い方は知らなかったわ。ヒトなど哺乳類の体内時計には、脳の神経細胞にある中枢時計と、全身の臓器や器官の細胞が持つ末梢時計とがあるの。それぞれに時計遺伝子があって時を刻んでいるんですって。中枢時計の時計遺伝子から標準時刻が発信され、ホルモンや自律神経、体温の変化によって各臓器や器官に伝えられ、末梢時 計の時計遺伝子が時刻を中枢時計に合わせているのよ。


ひなこちゃん

私達の身体って時計だらけなんですね! しかもそれがちゃんと同じ時刻で活動するようになっているなんて、良く出来てるなぁ。



皮膚と概日リズム

ひなこちゃん

ところで、いろいろな細胞にも時計があるなら、皮膚の細胞にもあるのですか?


ノン子さん

最近になってだけど、表皮細胞を始めメラニン色素を作る色素細胞や、異物侵入を見張るランゲルハンス細胞、真皮を作り出す線維芽細胞など多くの細胞に末梢時計があるし概日リズムもあることが確認されたのよ。


ひなこちゃん

皮膚にも昼と夜があるんですね。


ノン子さん

ザックリ言うと、昼はバリア機能が活発になり、夜は修復機能が活発になるのよ。


ひなこちゃん

バリア機能が活発になっているのは、どうしてわかるんですか?


ノン子さん

例えば、皮脂の分泌量は正午ごろ最大になるし、ちょうどそのころ皮膚のpHの酸性度も強まるの。


ひなこちゃん

皮脂膜はお肌の乾燥を防いで、お肌は酸性の方が病原菌に強くなるのでしたね。


ノン子さん

逆に表皮細胞の増殖は夜11時ころが最も活発になるの。その時間帯には皮膚の血流量が増えたり、アミノ酸やコラーゲンの量も多くなったりしているのよ。


ひなこちゃん

アミノ酸は表皮細胞が増殖して、それが角質細胞に変化する間に作り出され、角質層で天然保湿因子として働くのでしたね。昼間の汗や入浴などで流れて減ってしまうから夜間に補充されるということなんですね。


ノン子さん

補充活動に必要な酸素や栄養分がお肌に運ばれるよう、血流量も増えているのね。面白いことに、夜中に自然に蒸発する水分の量が多くなることから、皮膚は、夜にはバリア機能が弱まっているようなの。


ひなこちゃん

昼間は外敵にさらされる機会が多いから護りに徹し、夜間はバリア機能は後回しにして修復に徹するんですね。それが昔からお肌にプログラムされていたんですねぇ。



様々な時差ボケ

ノン子さん

厳密に調べてみると、体内時計の周期はきっちり24時間ではないそうよ。それでもヒトの一日と地球の一日がズレないのは、目が光を感じたり食事をすることなどで中枢時計がリセットされるからなの。海外旅行で時差ボケするのは、その人の身体の一日と旅行先の一日がズレてしまうからなのよ。旅行の時差ボケはやがて戻るけど、最近問題になっているのは社会的時差ボケね。


ひなこちゃん

社会的時差ボケって、これもまた初めて聞く言葉です。


ノン子さん

交代制勤務だったり、残業が続いたり、長い休みの間に夜更かしのクセがついてしまったりして生活が不規則になると、体内時計が狂って身体の概日リズムも狂ってくるの。このようにその人本来の体内時計と、生活時間帯とのミスマッチを社会的時差ボケというのよ。


ひなこちゃん

病院に勤務している友達が肌荒れを気にしていましたけれど、原因はそこにあるのかしら? お肌の修復時間にゆっくり休めないんですものね。


ノン子さん

概日リズムの乱れがお肌にどう影響するのか、実はまだ研究が始まったばかりなのよ。でも影響の大きさを推測させる実験があるのよ。普段ほぼ決まった時刻に寝たり起きたりして規則正しい生活をしている人に、『いつもと同じ時刻に眠る→夜中の2時に起きる→明るい部屋で5分間パズルをする→その結果を携帯メールで送信する』ということを2日続けてもらったところ、それだけで皮膚のバリア機能や保湿機能が低下してしまったの。


ひなこちゃん

全く眠らないわけではないのに影響が出ちゃったんですね。お肌って本当にデリケートなんだなぁ。



リズムに合わせてケアを

ノン子さん

医療現場では、概日リズムの乱れがいろいろな病気の原因となることや、概日リズムに合わせた薬の使い方で効果を上げられることがわかってきて、治療に役立てられるようになって来たの。


ひなこちゃん

それならスキンケアにも概日リズムが活かせそうですね。


ノン子さん

まだ実験段階だけど、少しずつ可能性が見出されてきているのよ。例えば〝フィラグリン〟というたんぱく質を作り出す遺伝子の活動が、日中に活発になることがわかったの。つまり、フィラグリンは日中に作られるということね。


ひなこちゃん

フィラグリンって、お肌のバリア機能を果たすために欠かせないとか。それが日中にたくさん作られるのは、納得ですね。


ノン子さん

さらにフィラグリンを作る遺伝子の働きを、ちょうど日中に高めてくれる成分が見つかっているの。実用化はまだだけど、これらの成分は強制的にフィラグリンを増やすのではなく、お肌の増産体制をバックアップすることになるのでお肌本来の機能を高めることになるのでは、と期待されているの。


ひなこちゃん

お肌本来の機能を高めるなんて、アサイゲルマニウムみたいですね。アサイゲルマニウムに昼と夜とで違う作用があったらもっと効果的に使えるかもしれませんね。


ノン子さん

まだまだ調べて行くわよ!



参考文献
1) 土師信一郎、合津陽子:肌の生体リズムに基づく新スキンケア技術の開発,FRAGRANCE JOURNAL,43(10),21(2015)
2)大戸茂弘:体内時計を基盤にした時間薬理学,医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス,46(12),837(2015)
3)Kazuo Mishima,et.al:In Vitro circadian period is associated with circadian/sleep preference,Scientific Reports, 3, Article Number: 2074 (2013)


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