医療法人健仁会 塩田クリニック 理事長/院長 塩田啓仁先生浅井フーズ通信

人物探検隊

2016年 春・夏

昭和 24年福岡県生まれ。昭和 51年関西医科大学を卒業後、研修の後、大学院第一内科学講座に進む。昭和57 年学位取得後、母校の第一内科学講座の助手となり、昭和61 年より講師。大学病院での診療とともに大学で内科学を講義しながら専門であるがんの化学療法の研究と指導に携わる。がん治療の過程で治療よりも早期発見、早期予防が大きく患者の生死を左右することに目覚め、以後、予防医学に重点をおいた治療と研究を進める。平成2 年予防医学を主体とする塩田クリニックを大阪市城東区に開設。健康診断、人間ドックを専門にした早期発見と早期予防に全力を注ぐ。最近は産業医、校医としても早期予防の観点から労働者や学生の健康管理を中心に活動。

予防医学を目指して

医師を目指したのはいつからですか。

そんなに元気な子供じゃなかったし、父親もあまり丈夫でなかったので、病院や診療所との付き合いは患者としてあったんです。医者になりたいと思いだしたのは高校になってからだったかな。僕は小倉出身ですので、本当は九州に居たかったんですが、大阪にやって来ました。

京都や奈良のお寺に興味があったので、関西医大に入ったおかげで毎週のように京都のお寺を回っていましたね。入学してすぐに先輩から、語学だけはちゃんとやっておけと言われて、京都にドイツ語を習いに行ってたんですよ。定期を買ったので、もったいないから英会話学校にも週2回行って、土日も京都へ行って、お寺をほとんど見て回りました。京都はすごく好きですし、関西医大に来てよかったなって。(笑)

初めから内科の方向へ?

内科は範囲が広いのでその中で何か自分の好きな方向が見えてくるかなと。外科系に行きたい気持ちもあったんですけど、外科は一人ではなかなかできないところがあるでしょう。僕はわがままだから何でも一人でやりたかったので。大学病院ですから、いろんな病院から紹介されてきて最終的な治療をするわけです。そうすると結局亡くなっていく人ばかりが僕らの患者さんになってしまう。なんでこんなになるまで…と本当に悲しくて、そうなる前になんとかならんかったのかな、というのが心に湧いてきて、そこから予防医学の方に入っていったんです。どうしたら病気が予防できるか、どうしても病気になるんだったら、どうしたら早期発見できるか、ということですね。

内科の大学院に入って、がんの化学療法の分野に進んで、多剤併用療法を研究する中で、僕の研究博士論文になったコエンザイムQ 10の研究、指導を受けました。当時の研究はどうしたら抗がん剤の効果を上げることができるかという意味のものでした。

健診の意義と食の大切さ

開業する時はどのような病院を?

予防医学をやりたいと思って、最初から人間ドックと健診をメインに進めていきました。ところがなかなか周囲から認めてもらえなかったんです。開業したのは平成2年ですが、当時、この城東区で健診や人間ドックを主にやるような診療所はなかったので。1 年ぐらい前から準備して、年明けすぐに開業できると思ってたんですが、結局、10月になりました。それまでみんなが実験台になって健診の練習をしましたけどね。

25年前としてはとても先進的な考え方でしたね。

患者さんはすぐに薬が欲しい、点滴をって来られるんだけど、それよりも食事の方を、こうすれば病気にならなくて済むとか、病気でも楽になるとか、説明してね。最初から栄養士さんに来てもらって、ドックの後に説明してもらうというのをしました。毎年ドックを受ける人が同じことを聞かされることになるので、食事指導はだんだん減りはしましたけど、今でもずっとやっています

健康診断は受けて結果表をもらうだけ、という人も多いと思いますが、健診の意味についてどうお考えですか。

健診や人間ドックの結果というと数字ばかりを気にしますが、数字じゃないんですよ。その数字は、ずーっと生活している中のたった1断面のデータでしかないでしょ。その数字の前の生活がどうだったから、こういう結果が出たとか、こういう結果が出たから、これからはこうしていこうとか、ちゃんと考え直してもらうのが健診だと思うんです。1 断面だけをみて、良い、悪い、再検、経過観察、要治療、それだけでは意味ないんですよね。連続した流れを見るのが一番大事な健診の見方だと思いますね。

食生活を中心にした、その人の生活の背景がとても大事だと思うんです。その結果が数値に表れているわけなので、そのあたりをよく話しますね。それこそが健診の意味があるということだと思っています。

先生が食事指導もされるのですか。

食事に関しては、感染症を除いてほとんどの病気は口から入るものによってなるし、口から入れるものによってまた病気も治っていくという観点から一番大切にしています。予防医学といってもあまり難しいことを言うと嫌がられるので、食事の方から話すようにしてます。  

砂糖を摂り過ぎたらいけないってわかっていても、どのくらい砂糖を摂っているかはわかってない。だから説明をするときでも現物を目の前に出すんです。500mlのサイダーにどのくらい砂糖が入っているかご存知ですか。51gですよ。コーヒー飲む時のスティック状の砂糖が大体3gですから、あれを17本ですよ。みんなびっくりするわけですよね。  


僕は砂糖や塩分、コレステロールなんかの量を計算して書いてあるんですけど、卵2個の黄身のコレステロールが大体バター1箱と一緒ですから。だから毎日1個卵を食べてる人は1週間にバター3箱分のコレステロールを食べてることになるんですよ。それだけの脂を摂って動脈硬化になる、ならないとか、運動すればとか、もうとても追いつかないですよ。卵も今は良いっていう意見も結構ありますけど、1週間に2個ぐらいまでにしておく方が安全かなと。他の物にもいろいろ脂は入っていますしね。


ドックや健診で、どうしてこんな数字が?という時は、生活背景をよく尋ねて、原因を説明して生活習慣を変えてもらってます。 

数値に表れること、表れないこと

健診は病気の早期発見に役立ちますか。

よく腫瘍マーカーとか言いますが、今までの経験では、あれ、それほど当てにならないですね。本当に当てになるのはヘモグロビンです。がんかどうかを診ていくのに、2~3年の間のヘモグロビンが0.1ずつでも下がっていっている人はもう特別要注意です。それと総蛋白とコリンエステラーゼ。コリンエステラーゼは脂肪肝のある人は高い数値になりますが、普通の場合は消耗性疾患の時にどんどん下がっていくんです。がんの末期の時なんかは蝋燭の火が消えるようにゼロに近付くくらい減っていくんですね。だから、この2~3年下がっていっている人は要注意です。この3つを見れば大体のことはわかります。

あとは患者さんの嗜好の変化ですよ。毎晩お酒を美味しく飲んで、よく眠られるならいいですけど、この2~3ヵ月は同じお酒を飲んでも美味しくないとか。嗜好の変化というのはがんの初発症状だと思います。例えば、食道がんの時に通過障害や嚥下障害を起こすよりもっと前に嗜好の変化が起こるんですよね。だから問診でヒヤっとすることがありますね。

本人は気付かない前兆のようなものがあるのでしょうか。

開業する前からだから、30年近く前からよく言ってたんだけど、脳神経外科病院の内科に派遣されていたことがあって、脳外科で入院してる患者さんは脳卒中の人が多いのですが、10人のうち9人くらいが耳たぶに太いシワがあるんです。本当に耳を折り曲げたようなシワが1本ね。これは心筋梗塞か脳梗塞か、脳出血かを確実に起こすっていうサインなんだってずっと思ってたんですよ。「フランツのサイン」といって、ちゃんと発表されてるんです。だから僕も外来をやりながら、耳たぶにシワのある患者さんには脳梗塞の予防や後遺症として使うような薬も飲んでもらっています。シワは脱水が原因のようです。患者さんに説明しても笑ってるけど、サインですから、予防医学というか、前兆というかね。それは数字にはなかなか出せないところなので大事なことだと思いますね。

学生アスリートとの共同研究

現在、大阪学院大学陸上競技部の学生の健康アドバイザーも担っていらっしゃいますね。

志水先生が陸上競技部の監督になられた時に、決まったところでの検査を希望されて、浅井ゲルマニウム研究所とのご縁で紹介いただき、ご協力することになったんですね。2010年からアサイゲルマニウムをアスリートの健康管理に活かすプロジェクトが始まって、定期的に血液検査をしたりしています。朝6時に採血に行かなきゃいけないのに起きたら6時、なんてこともありましたけど、志水先生をはじめ、みんなやる気があるので、こっちもそれにお応えしないといけないなと。

学生たちの健康管理と一般の健診に違いはありますか。

目的を持っている学生さんたちにとっては単なる検査でなく、その時の自身の状態を把握する大事な材料となりますよね。監督からの生活指導、食事指導、アドバイスなども含めて、それを認識し、実行するのがスポーツの基本になるんだと思います。それができた人間が勝者、できない者が敗者になる。そういう意味では、それを目に見える形にするのが健診の役目で、あとは走ったら結果が出るわけですから、それを健診の結果と合わせて、主観的にも客観的にも納得できる形で説明を受けたり、自覚できれば、自分のこれからの規範になりますよね。そこが一般の方の健診結果と決定的に違うところじゃないでしょうか。

このプロジェクトは「優勝するため」というより「優勝できるトレーニングが可能な身体作り」がコンセプトだそうですが、大事なことは?

成績ばかりを求めていくと、自分の身体を壊してでも、ということになりますよね。そうではなくて、ゲルマニウムを使って、まず自分の身体、器作りから考えて、優勝できるようなトレーニングができる身体にして、それが結果に出る、優勝に結びつくという形がベストだと思いますね。最初は朝早い採血を嫌がるような雰囲気もあったんですけど、今は自分たちの方からサッと腕を出したり、対話もできるようになり、選手たちの意識もだいぶ上がってきています。

アスリートも食事の内容は大事ですけど、一番大事なのは「感謝」です。まず、人間の身体に良い食べ物がこの地上でできるわけですよね。自然にできるものも、人間が手を加えて作るものも、海の幸、山の幸の恵みに対する感謝がひとつ。それから、それらを美味しく料理してくれる人にも感謝をする。そして忘れてはいけないのは自分の身体ですよ。自分の身体は食べたものが消化されて、血液となって全身を巡って、絶えず休まず、ずっと動いている。だからいろんなことができるので、この身体に感謝しないといけない。やはり、大いなる自然に人間は生かされているんだということに「感謝」なんですよね。その感謝のもとで仕事ができる、駅伝ができる、そこに繋がっていくわけですので。

共同研究の成果は出ていますか。

大学選手権では残念ながらまだ優勝はできていませんが、あの高橋尚子さんが出場されていた時代で最高10位、共同研究を始める直前は21位。それが、志水監督が就任されて、その手腕もあると思いますが、8位入賞、5位、14位、3位、6位、一昨年の富士山女子駅伝で2位など、安定して上位の結果を出せているようですね。これからが楽しみです。

最後に先生ご自身の健康を保つ秘訣は何ですか。

それはやっぱり「感謝」です。いろんなことに感謝しながら私たちは生かされている、その感謝する「気」が健康の秘訣だと思いますね。虫歯で歯が痛かったら食べられないでしょ。その時どれだけ歯が丈夫だったらいいかなって思いますよね。怪我して骨折なんかしたら歩けない。その時、普段歩いていた時の感謝が足りなかったなというのを思い出すんですよね。普段から感謝して生きることが大事だと思いますね。

健診やドックもただ受けるだけでなく、その結果もしっかり認識して活かしていかなければ意味がないことを改めて感じました。有難うございました。

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