夏の体調管理の強い味方 梅干し浅井フーズ通信

ヘルスサイエンス

2020.12.24

元祖健康食品!?

そもそも梅の実は中国から薬として伝わりました。その梅を「梅干し」という優れた加工品にしたのは日本人の知恵です。梅干しも当初は薬用に用いられ、それがやがて各家庭で作られる保存食へと広まっていきました。

「梅はその日の難逃れ」などのことわざがあるように、古くから身体に良いものとされてきた梅干しは、健康食品の元祖とも言える食品です。あまりにも当たり前に、身近な存在として食べられてきたため、研究されるようになったのは案外最近ですが、伝承的に言われてきた梅干しによる疲労回復、食欲増進、整腸、鎮痛、殺菌などの効果は科学的にも裏付けされ、さらに各成分ごとの新たな機能性も解明されつつあります。

梅干しの成分の中でも、今回注目したいのがクエン酸。梅干しは見ただけでも口の中が酸っぱくなり、唾液が出てくるほどですが、梅干しのあの酸っぱさの正体こそがクエン酸です。クエン酸は酸っぱいものに含まれている有機酸の一種で、果物の柑橘類や酢などにも含まれていますが、特に梅干しには豊富に含まれています。

エネルギーを産みだすクエン酸

私たちが日々活動するエネルギーの源は炭水化物(糖質)やたんぱく質、脂肪など、食事からとるさまざまな栄養素です。それらの栄養素は分解・代謝されてエネルギーを産み出し、最後には炭酸ガスと水になります。この過程で重要な働きをしているのが「クエン酸回路」または「クレブスサイクル」と呼ばれるエネルギー産生のしくみです。英国のクレブス博士によって解明され、博士はこの発見でノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

体内に入った栄養素は、このクエン酸回路に取り込まれ、代謝され、エネルギーを作り出すのです。そして、クエン酸回路を動かし、エネルギーの産生に深く関わっているのがクエン酸をはじめとする8種類の有機酸です。まず、回路の着火剤となるクエン酸から始まり、アコニット酸、イソクエン酸、αケトグルタル酸、コハク酸、フマール酸、リンゴ酸、オキザロ酢酸と循環しながら栄養素が代謝されていきます。体内に常に十分なクエン酸があり、クエン酸回路の循環が活発であれば、それだけエネルギー産生効率が 高まり、栄養素が無駄なくエネルギーに変わっていくのです。

いくらエネルギー源となる栄養素を摂っても、クエン酸がないとクエン酸回路がスムーズに回転しないので代謝が進みません。すると、栄養素の不完全燃焼が起こり、エネルギー産生どころか、乳酸や脂肪が蓄積してしまうことになります。乳酸は運動、労働などによっても生成される、疲労度の目安となる代謝産物ですが、クエン酸が豊富にあれば循環が活発になり、乳酸もできにくくなるため、疲労予防にもなるのです。

夏バテに梅干し

節電の夏、猛暑の夏は夏バテが心配です。暑さが続くと冷たい麺類などの炭水化物食に偏りがちになります。炭水化物(糖質)はエネルギーの原料ではありますが、エネルギーに変換しなくては有効利用できず、余分な脂肪になってしまいます。だから、まず炭水化物の分解を助けるビタミンB1、B2が必要なのですが、さらにそれをエネルギーにするにはクエン酸を一緒にとることが大事なのです。

そこで梅干しの登場です。梅干しのクエン酸でクエン酸回路の循環が良くなり、エネルギー産生効率がアップします。そうすれば乳酸もできにくく、疲労を予防することになり、体力を維持できるため、夏バテに効果的、というわけです。また、夏バテで体力を消耗している時は、胃腸などの働きも弱まり、食欲もなくなります。そんなときにも梅干しがおすすめ。唾液や消化液の分泌を促し、消化吸収を助け、汗で失ったミネラルも補給してくれます。

熱中症予防に梅干し

夏にもう一つ気を付けなければいけないのが熱中症。体温調節機能や体内ミネラルのバランスが崩れ、熱が体内にこもり、脱水症状を起こしてしまいます。熱中症予防や脱水症状の応急処置には経口補水液やスポーツドリンクを飲ませたりしますが、その成分はブドウ糖とナトリウム、カリウムなどのミネラル。これを家庭にあるもので代用して作ることができます。500mL~1Lの水に梅干し1個と蜂蜜大さじ1杯を入れればOK。レモンを加えるとクエン酸もさらにプラスされ、爽やかで飲みやすいかもしれません(蜂蜜入りなので、1歳未満の乳児は飲用を避けてください)。

食中毒予防に梅干し

梅干しを入れておくとご飯が傷みにくいことはよく知られています。特に夏場はお弁当やおにぎりに必ずといっていいほど梅干しが入れられますが、それは梅干しのクエン酸に食中毒の原因となる黄色ブドウ球菌やO-157などの細菌を抑制する働きがあるからです。また梅の風味成分でもあるベンズアルデヒドという成分にも抗菌作用があるので、腐敗防止に役立ちます。夏場はお米を炊く時に梅干しを一粒入れると、傷みにくい上にほんのり香りもよく、食欲が増します。

梅干しは戦国時代の兵糧として必需品でした。梅干しの殺菌作用や疲労回復作用を経験的に知っていたのですね。私たちも先人たちの知恵を見直して、身近な食材で元気に夏を乗りきりましょう。クエン酸はたくさん摂っても摂り過ぎの心配はありません。ただし、梅干しでクエン酸を摂る場合は塩分の摂り過ぎに注意。大きさにもよりますが、1日1~2粒程度で良いでしょう。

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