適度な量が肝心 お酒で健康に浅井フーズ通信

ヘルスサイエンス

2020.12.24

お酒は人類より歴史が長い?

そもそものお酒は、落ちた果実や木の実が自然発酵してできた偶然の産物だったようで、これは人類が現れる以前からできていた可能性があるとか。人類が生まれてからも同様の自然発酵したお酒の発見に始まり、人工的にも有史以前から造られるようになりました。人がワインやビールを醸造していた記録は約6千年前のメソポタミアの遺跡に既に見られ、人類と共に歩んできたお酒の長い歴史を物語っています。日本でも弥生時代にはどぶろくのような日本酒の原型が作られていました。農業や稲作の伝来、発展とともに、お酒造りも進化していったのです。

古代のお酒は神への捧げ物としてわずかな量しか造られず、大切に扱われました。それは日本でも世界各地でも同じようです。天変地異を神の怒りととらえ、それを鎮めるためにお酒を供え、お酒の原料でもある穀物や果実などの実りを祈りました。やがて、神への供物と同じものを飲むことで身を清め、新しい活力が授けられると考え、折々の儀式や祭りで人々もお酒を飲むようになりました。〝酒に酔う〟ことは非日常の境地に至り、神との交流を深める神聖なこととも考えられたのです。日本で今でもお供えするお酒を「御神酒(おみき)」といい、冠婚葬祭でふるまわれるのはその名残といえるでしょう。古くから神とお酒と人々の生活は深く結びついていたのです。

お酒は薬だった

漢方医学の古医書には生薬をお酒で煎じたり、お酒で服用する方法が出てきます。昔の人たちは薬である薬草や生薬を飲みやすくするため、煮出したり、細かく砕いて粉や丸剤にするなど、いろいろ工夫しました。西洋のスープも薬草などを煮出して病人食にしたのが始まりだといいます。やがて貴重な医薬でもあったお酒とともに生薬や薬草を摂り入れる薬酒という方法を編み出します。アルコールによって薬効成分がよく浸出し、アルコールと一緒にその成分が体内に行き渡るなどの効果があることを、先人たちは経験と知恵から見い出し、薬酒として活用したのです。

お酒は薬だった
 古くから現代にも伝わる薬酒の一つがお正月に飲む「お屠と蘇そ」です。これは平安初期の嵯峨天皇時代に中国から伝わり、宮中行事として始められた風習で、みりんまたは酒に山椒や肉桂など数種の薬草を合わせた屠蘇散を浸して作ります。邪気を祓い、家内平安と幸福、延命長寿を願って元旦に飲むものとして広まりました。〝屠蘇〟の字はお正月にしてはちょっと物騒な印象ですが、これはもともと「蘇」という鬼を屠ほふる(打ち滅ぼす)という意味があったためだそうです。ちなみに医者の「医」の字の旧字体は「醫」。この字の下の部分「酉」は酒つぼの形を表わし、酒を意味しています。つまり「薬酒を用いて病をいやす医者」を意味しているのです。薬とお酒の深い関係がうかがえます。

お酒で健康になる!?

さて、現代ではもっぱら嗜好品としてさまざまなお酒が飲まれています。薬とは反対に健康の敵であるかのようなイメージも拭えないお酒ですが、本当にそうで しょうか。日本酒、ワイン、ビールなどの醸造酒。焼酎、ウィスキー、ブランデーなどの蒸留酒。リキュール、梅酒などの混成酒。お酒はそれぞれ原料や成分、造り方も違えば、その健康効果も違い、さまざまな国や地域には、その土地の風土や食べ物に合ったお酒があります。例えば、暑い土地には泡盛、テキーラなどアルコール度数の高い蒸留酒があります。これは発汗作用で体を冷やしてくれるからなのだそうです。また、醸造酒には原料や発酵から生じる栄養成分がそのまま含まれています。米と米麹の発酵で造られる日本酒に はアミノ酸、ビタミン、ペプチド、ミネラルなどが豊富に含まれていて、中でも私たちの体の細胞や筋肉、ホルモンなどを構成する重要な成分であるアミノ酸がたっぷり。他にも赤ワインのポリフェノール効果は言うまでもないでしょう。

お酒で健康になる!?
さらに、アルコールには血行を促進させて体を温める作用や、飲むとぐっすり眠れる安眠作用、利尿作用などもあります。食欲が増し、食事がおいしく食べられることも大きいのではないでしょうか。宴会や会食の場ではコミュニケーションを円滑にする役目も果たしますね。そして、皆さんが一番実感されているのはストレス解消効果かもしれません。お酒を飲むことで心と体の緊張が解きほぐされ、リラックスし、ストレスが発散されるのです。

〝適量〟のお酒で長生き

しかし、これらはいずれも飲み過ぎては逆効果。空腹時に一気に飲んだり、アルコール度数の高いものや量を過度に飲めば肝臓に負担をかけてしまいます。アル コールの吸収をゆっくりさせるため最初に油料理を少し食べ、後は脂の少ない肉や魚、豆腐、豆類、野菜など、高タンパク、高ビタミンの食材を摂りながら飲みましょう。お酒を飲むと太ると思われがちですが、多くの場合は高カロリーなおつまみや飲んだ後に食べるラーメンなどの総摂取カロリーが問題なのです。肝臓や胃腸のためには食べながら飲むことが大切ですが、お酒が進むとつい食べ過ぎてしまう人は注意しましょう。

〝適量〟のお酒で長生き
「Jカーブ効果」といって、全くお酒を飲まない人、適量のお酒を飲む人、大量のお酒を飲む人の死亡率をグラフに表わすと、適量の人が最も低いことを示すJの形のグラフになるというデータがあります。これはアルコールが動脈硬化や心筋梗塞を防ぐ善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを抑える働きによるといわれます。適量で飲んでこそ百薬の長といえるようです。適量といっても、体格や体質、体調、性別などにより違ってきますが、大体、ビールなら中瓶1本、日本酒なら1合、ワインなら1~ 2杯ぐらいが目安です。もちろん、休肝日をつくることもお忘れなく。

お酒で風邪を撃退

風邪を引きやすいこの季節は、体を温めるお酒を風邪予防にも利用しましょう。卵酒やホットワインは風邪の民間療法として皆さんもご存知でしょう。

お酒を飲むのが苦手な人は、酒風呂をお試し下さい。お風呂にコップ2~3杯の日本酒を入れるだけで良いのです。アルコールが血管を刺激して血行が良くなり、 ポカポカ温まって冷えや肩こり、腰痛にも良いようです。新陳代謝を促すことに加え、日本酒に含まれるアルブチンやアミノ酸、有機酸、糖質などでお肌がしっとりなめらかになる美肌効果もあるそうです。ただし、長風呂で酔っ払わないように気をつけて。温まった体が冷えないうちに布団に入り、体をよく休めて下さい。

お酒を薬にするのも、毒にするのも飲み方次第。おいしく有効に飲んでお酒を味方につけましょう。

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