乾燥は炎症の始まり浅井フーズ通信

スキンケア研究室

2020.12.17

乾燥注意報発令!

  • ひなこ

    ここのところお肌のカサカサを感じているのですが、天気予報ではまだ乾燥注意報は出てませんよね。

  • ノン子

    あら、そのカサカサこそ、お肌から発せられる乾燥注意報なのよ。

  • ひなこ

    あ、そうか!

  • ノン子

    今年の夏もきびしかったわね。お肌は、体温上昇を防ぐために汗をかく、という大仕事を果たしたおかげで、細胞間脂質や天然保湿成分も流れだして保湿力が落ちてしまっているの。加えて夏バテで食欲がなかったり冷たいものばかり摂っていると、それがさらにお肌のダメージになっていたのです。弱った胃腸からやっと吸収されたわずかな栄養も、身体の方が優先されるので、お肌は後回しになってしまうからなの。

  • ひなこ

    大きな仕事を科せられるのに栄養の補充はしてもらえない。お肌ってなんて気の毒…! でも、食欲はもうバッチリ回復しているのに、なぜまだカサカサのまま?

  • ノン子

    体内の立て直しが済み、お肌に栄養が回ってくるようになっても、お肌のターンオーバーには時間がかかるから保湿力の回復は少し遅れるの。暑い間は汗のおかげで感じないけれど、涼しくなって汗が減ると急に乾燥が気になり始めるということなのよ。

乾燥トラブルといえば…

  • ノン子

    通常の皮膚は表面の角層にがっちり守られています。角層は、頑丈な細胞膜の中に天然保湿成分と水分をたっぷり含んだ角質細胞がきちんと並び、その隙間を水分と脂質をたっぷり含んだ細胞間脂質が埋めているので、外敵の侵入はもちろん、身体の中から水分が抜けるのも防いでくれます。

  • ひなこ

    でも、カサカサ肌では天然保湿成分も細胞間脂質も減ってしまっているんですね。

  • ノン子

    そうなのよ。言わば、固く縮んでしまった角質細胞がスカスカに並んでいる状態よ。そういう状態だと外敵の侵入も受けやすいし、表皮まで伸びていて、熱さ・冷たさ・触感・痛みやかゆみを感じとる知覚神経がむき出しの状態になって、普段は何でもないことでも敏感に刺激として受けやすくなるの。例えば、衣服に触れることさえ刺激になって、かゆみと感じてしまったりするの。

  • ひなこ

    カサカサしてかゆい、ってそういうことだったんですか! かゆみは、一度掻きはじめると止まらなくなることがあるから厄介ですよね。

  • ノン子

    「かく」という刺激で、毛細血管や神経の周囲にあるマスト細胞という細胞から、かゆみを起こす物質ヒスタミンが出て、さらにかゆみ神経を刺激するので止まらなくなるのよ。ヒスタミンの他にも炎症を起こす物質を出すから、かいたところが赤く腫れたりするのよ。

  • ひなこ

    かきこわしちゃうとなかなか治らないし、かゆみは侮れないですね。

  • ノン子

    かゆみのようにわかりやすい異変はまだ良いけれど、乾燥は知らないうちにジワジワ来るような異変も起こしているのよ。

  • ひなこ

    えっ? まさか「シワ」のことですか?

乾燥は「シワ」へと続く

  • ノン子

    そう、ダジャレではないのよ。乾燥していること自体を炎症の始まりと捉えて皮膚が反応した結果「シワ」もできるの。一時的な乾燥なら保湿ケアですぐ治まるけど、放っておくと段々深いシワへと進んで行くのよ。

  • ひなこ

    乾燥がシワの素とは聞いていましたが、何故そんなことになるのでしょう?

  • ノン子

    乾燥状態が続くと、表皮細胞から炎症反応を起こさせる伝達物質が出されるの。

  • ひなこ

    炎症反応ですか?

  • ノン子

    そうなのよ。この伝達物質は、自分を作り出した表皮細胞を刺激し直して、今度は活性酸素を発生させちゃうのよ。

  • ひなこ

    表皮で活性酸素が発生するなんて、日焼けした時みたいですね。

  • ノン子

    その通り! この伝達物質は紫外線を浴びた時に表皮細胞から発生するのと同じものなのよ。

  • ひなこ

    わぁ、乾燥するだけでも活性酸素ができちゃうなんて!

  • ノン子

    実は生命活動のあるところ、必ず活性酸素が発生しているんだけど、 ちゃんと活性酸素を打ち消す酵素なども作られるので、すぐには害は発生しません。でも、カサカサ程度の乾燥状態でも長く続くと、それだけ炎症反応が続くので活性酸素を打ち消しきれなくなってくるの。その結果、真皮の基本構造となるコラーゲンやエラスチンといった蛋白質や、その間を埋めるヒアルロン酸などの成分が分解されてしまって、真皮は弾力を保てなくなり深ーいシワが刻まれてしまうのです。

  • ひなこ

    皮膚の乾燥って本当に深刻だったんですね、なんちゃって!

乾燥には保湿で対抗

  • ノン子

    炎症だって、本来は侵入してきた外敵をやっつけるための防衛反応なのよ。でも大したことない、と放っておくと慢性化して被害が大きくなっていくのよ。

  • ひなこ

    カサカサ感やかゆみは、乾燥注意報というよりお肌からのSOSと考えるべきですね。

  • ノン子

    そうね。乾燥状態から抜け出そうとしてターンオーバーが早まり、未熟な角層が作られてさらに乾燥状態に陥るし、バリア機能も落ちるから、シワの事ばかりではなく早く応えてあげる方が良いわ。カサカサの時点なら、保湿化粧品で十分対応できるのよ。健康なお肌は、空気中からも水分を吸収してそれを保つ力があるのに、乾燥状態が続いた角層はその力も落ちています。そんな時、外から保湿してあげると徐々に吸水力も保持力も戻ってくるのよ。過敏になっている知覚神経も、しっかり保湿ケアを続けるうちに落ち着いてきます。

  • ひなこ

    本格的な乾燥シーズンに入る前に、元気を取り戻してもらわなければなりませんね。

  • ノン子

    最近は、皮膚のバリア機能低下と食物アレルギーの発症との関係も研究されているのよ。皮膚は表面的なバリアだけではなく、身体の内部と密接に連絡を取り合って身体を守っている最大の臓器です。他の臓器と違うのは、私たちが自分でいつも状態を確認し、ケアしてあげられることね。

  • ひなこ

    お肌からSOSを出されないよう、しっかりスキンケアしま~す。

参考文献

  1. 田上八郎、沼上克子:角層の保湿メカニズムとバリア機能-アトピー肌、敏感肌との関連をめぐって-,FRAGRANCE JOURNAL, 臨時増刊,No.17,2(2000)
  2. 日比野利彦:皮膚における慢性炎症のメカニズム- S100 蛋白質の役割- , FRAGRANCE JOURNAL,39(8),22(2011)
  3. 正木 仁:乾燥により促進されるシワ形成メカニズムとその抑制アプローチ,FRAGRANCE JOURNAL,42(2),12(2014)
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